橋爪利次氏は1967年の善隣学生会館事件当時の日本共産党側の日中友好協会の事務局長で、善隣学生会館内の同協会事務所に勤務していたということで、ここに紹介する「体験的[日中友好]裏面史(日本機関紙出版センター、1996年)」の他に、「中国覇権主義とのたたかい(新日本出版社、1992)」にも「三年近く、干渉と暴力から本部事務所をまもりぬく」という記事を書いています。日本共産党の歴史観(?)では、善隣学生会館事件を日中友好協会の分裂の過程の一事件として語り、日中友好協会の分裂については、中国共産党の日本共産党への(あるいは「独立国」日本に対する)「干渉」の過程の一つの断面として語ることが一般的のようであり、善隣学生会館事件の具体的な事実関係についての詳細な記述は、現在まで私が収集してきた限りにおいては、同党が出版、発行、配布している膨大な資料の中にも多くを見ることはできません。その中で、橋爪氏のいくつかの証言や著述は、体験者として比較的事実関係を多く語っている資料といえると思います。「体験的[日中友好]裏面史」についていうならば、全体の記述が、日中友好協会のいわゆる「民主運動」の路線の問題における自己の正当性や善隣学生会館事件における自らの立場の正しさを、中国文化大革命や紅衛兵に対する論評抜きの非難、感情的な否定に依存して、論証しているといった構造になっており、私が特に重要と考えている1967年2月28日から3月2日までの流血事件や、この事件に至るまでの華僑寮生と「日中友好協会」との軋轢などについての目新しい事実はほとんど得ることができません。

 しかし、そうはいっても、「裏面史」は日本共産党側の語る善隣学生会館事件として、最も詳しい資料の一つであると思います。この書には、主観的、というよりもむしろ私的な記述が多く含まれており、たとえば、「日中友好協会」内のごく内輪の人物について、長く紙面を割き、その間に善隣会館事件の事実関係をぱらぱらとはさんでいるといったところがありますが、第1章全体を引用します。

2001年1月14日 猛獣文士


橋爪利次著「体験的[日中友好]裏面史」より
第1章 東京でおこった文化大革命


目  次
1 善隣会館事件の発生
2 襲撃され不法監禁つづく
3 連日連夜の死闘
4 事務局日記から
5 文化界への波紋
6 北京になびく党と集団
7 干渉下の友好運動
8 文化人革命の傷痕

(橋爪利次著「体験的[日中友好]裏面史」第1章 東京でおこった文化大革命、日本機関紙出版センター、1996年)

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