「日本共産党重要論文集6」(日本共産党中央委員会出版局1968年)より「日本社会党に質問する――日本社会党本部「通達」の日本共産党非難について――(1967年7月11日「赤旗紙」)」。
2000年12月17日 猛獣文士

日本社会党に質問する
  ――日本社会党本部「通達」の日本共産党非難について――
一九六七・七・一一「赤旗」


 さる六月二十六日、日本社会党の成田知巳書記長は、わが党本部を訪問し、日中友好協会本部襲撃事件をめぐるわが党の五月二十四日およぴ六月九日付の日本社会党への申し入れにたいする回答書を宮本顕治書記長に手渡しました。

 五月二十四日およぴ六月九日のわが党の申し入れは、日本社会党本部が、在日華僑学生らによる日中友好協会本部襲撃事件にかんして、一方的な資料や判断にもとづいてわが党を不当に非難した「通達」を発表したことについて、この「通達」の内容が事実と道理に反するものであることを指摘するとともに、日本社会党が、事実にもとづいて真実を探求する立場にたって、この問題の解決のために責任ある態度をとることをもとめたものでした。そして、五月二十四日の申し入れのさいには、野坂議長、宮本書記長が、日中友好協会本部襲撃事件の真相を、具体的資料、写真などにもとづいて詳細にあぎらかにして、「通達」が事実をゆがめて誤った判断をおこなっていることを指摘したのにたいし、佐々木委員長は、再調査の約束はでぎないがといいながらも、「委員長として事実を調ぺてみる」ことを言明しました。

 ところが、日本社会党は、六月九日のわが党の再度の申し入れの後、六月二十日に中央執行委員会をひらき、「五・一八付本部日中通達第一号『日中友好運動及び善隣学生会館事件にたいする党の態度について』の理解のために」と題する文書(以下文書「理解のために」と略称)を採択して、これを商業新聞などに公表しました。そして、そのあと、冒頭にのべたように、六月二十六日、回答をよせたのです。

 この回答書は、まず六月二十日の日本社会党中央執行委員会で、五月十八日付「通達」について「統一見解」を決定したことをのべたうえ、同党は「善隣学生会館事件は、昨年以来、日中青年交流、中国経済展等に対してあらわれた一連の妨害事件の継続として起ったものであると判断」するから、事件そのものの「再調査は必要ない心のと考え」ると断定しています。さらに、回答書は、佐々木委員長が野坂議長に答えた趣旨は、「通達の作成及ぴ発送の経過について調査するということ」で、事件の事実関係について再調査するという趣旨のものではなかったといっています。

 この回答は、まず、五月二十四日の申し入れのさいには、社会党側が、「通達」の趣旨は主として善隣学生会館における事件についての社会党の態度表明にあったむねをのべていたが、こんどは、日中青年交流など「一連の妨害事件」なるものをいいだして、日中友好協会本部襲撃事件の事実問題にふれることを避げています。これは、この事件について「通達」のおこなった、日本共産党などにたいする不当な非難を撤回するどころか、かえって、その非難の「理由つけ」を不当におしひろげるものでしかありません。また、わが党の申し入れが、「通達」の作成および発送の経過についての社会党内の党務上の手続き問題をあきらかにすることをもとめたものでないことも、いうまでもありません。この点は、六月二十六日、宮本書記長が成田書記長に会ったさいに、すぐに宮本書記長からのべておいたところです。したがって、社会党内の手続ぎの件に問題があったかのようにいう回答はわが党の首肯できないところです。

 このように、日本社会党は、社会党本部の五・一八「通達」後のわが党からの二回にわたる申し入れにたいし、事実上、申し入れの趣旨をまったく無視する態度をとってぎました。わが党は、このことにたいして、つよく遺憾の意を表明せざるをえません。 この問題は、わが党が不当に中傷されているということだげでなく、わが国の民主運動が真実と正義をあくまで擁護するか、民主運動が当然もつべぎ自主性を放棄するかにかかわる重大な問題であるので、わが党は、この事態をそのまま放置することはでぎません。

 よって、わが党は日本社会党指導部にたいし、ここにあらためて左記のとおり、質問を提起するものです。

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 一 
わが党は、二月二十八日以来の日中友好協会本部襲撃事件について、それが「通達」のいうような「中 国人学生等に対する襲撃傷害事件」ではなく、在日華僑学生や日中友好協会からの脱走分子らが、あらかじめ準備された計画にしたがって、日中友好協会本部にたいして組織的、暴カ的な襲撃をくわえてぎた事件であることを、具体的な資料と証拠にもとづいて詳細に説明してきた。しかも、日中友好協会とその会員にたいする暴カ的襲撃は、その後現在までしばしばくりかえされている。それにもかかわらず、日本社会党指導部は、依然として、この事件を、共産党や民青などによる中国人学生襲撃事件とする「通達」の見解を固執している。
 (1) 社会党指導部は、わが党が一連の「壁新聞」や文書の写真(写真@)をしめしてあぎらかにしてきた ように、在日華僑学生や日中友好協会の脱走分子ぶ、事件のおこる何ヵ月も前から、日中友好協会本部を善隣 学生会館かわおいだす「奪還闘争」を公然と呼号してきた事実を、事実としていったいみとめるのか、みとめないのか。これは、この事件が、華僑学生らによってあらかじめ計画され準備された襲撃事件であることを、具体的に裏書きするものではないのか、どうか。

@ 事件前の1月にすでに日中友好協会の「奪還闘争」を扇動していた脱走派内の「造反団」のニュース。

 (2)在日華僑学生らは、とくに、三月一日から翌二日にかけて、こん棒や鉄棒などの凶器をもって日中友好協会本部事務所を襲撃し、同協会本部事務所への乱入をくわだて(写真AB)、同協会事務局員に暴行をくわえ、バリケードをきずいて日中友好協会事務局員を同会事務室内に不法監禁し、便所への通行さえ不可能にした(写真CD)。さらに、この間善隣学生会館の玄関をバリケードその他をもって封鎖して、同協会事務局の救援のもとめに応じてかけつけた人びとの通行を暴力的にはばみ、暴行傷害をくわえた。

 社会党指導部は、この襲撃、不法監禁の事実を、事実としてみとめるのか、どうか。

AB 3月2日在日華僑ら(手前)が日中友好協会本部事務所を襲撃、乱入しようとしているところ。
C 事務所への乱入を阻止されると、机や箱などで事務所入口前にバリケードをきずき、協会員を内部へ監禁した。
D 協会員がバリケードをおしのけようとすると、棒などでバリケードごしについたり、なぐったり。(向こう側=棒をもっているのが在日華僑学生ら)

 (3) これらの事件は、すべて、同会館内の華僑学生の居住する三、四階ではなく、日中友好協会が正当な権利をもって借用している同会館一階の同会事務所の入口で発生している。(写真Eおよび図面

 社会党指導部は、この事実をみとめるか、どうか。

 (4) いったい、社会党指導部は、日中友好協会とその会員に、このような急迫不正の権利の侵害を排除する正当防衛権がないとみているのか、どうか。

 (5) 華僑学生らのこの行為は、無頼の徒の暴カ行為であるが、「通達」は、華僑学生らの行為については、なんらふれていない。

 いったい、社会党指導部は、不法、不正な暴力行為であっても、それをおこなったのが中国人だから、かれらを非難してはならないという見地をとっているのか、どうか。もし、そういう見地が社会党指導部にあるのであれば、それは、いかなる理由にもとづくものであるか。

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 二 
社会党指導部は、「通達」のなかで、「この事件は、中国と日本共産党の路線の違いに端を発したものである」、「日中友好運動は、日本共産党の路線変更により阻害されてぎた」などと、昨年来の日中友好運動の混乱の原因が、わが党の「路線変更」なるものにあるかのようにいって、わが党の政治路線に不当な一方的な非難をくわえている。これにたいして、わが党は「赤旗」五月二十四日付論文「日中友好協会本部襲撃事件にたいする日本社会党の『通達』について」、および「赤旗」六月十五日付論文「社会党『通達』の『日本共産党の路線変更』論を反ばくする」で、事実にもとづいて、わが党の「路線変更」なる非難はまったく根拠のない中傷であり、昨年来、日中友好運動を阻害してきたものは、この運動を対外盲従と日本共産党攻撃の運動にかえようとする中国側の一部勢力とこれに迎合する対外盲従分子の策動であることを、詳細に解明した。しかし、社会党指導部は、今日にいたるまで、わが党のこの反論になんらこたえることなしに、その誤った命題を固執している。

 (1)社会党指導部はいったい、いかなる確固たる根拠にもとづいて、わが党の「路線変更」をうんぬんしているのか。

 わが党は、「赤旗」六月十五日付論文では、わが党ではなく、中国共産党指導部が、反米統一戦線の路線から反米・反ソの国際統一戦線の路線への重大な「路線変更」をおこなったことを具体的に指摘した。この「路線変更」は中国共産党指導部の政策を事実にもとづいて検討するならば、だれにも容易に確認でぎる明白な事実である。たとえば、中国共産党指導部の一九六三年六月の「国際共産主義運動の総路線についての提案」では、「社会主義陣営と国際プロレタリアートを中核とし、アメリカを先頭とする帝国主義と各国反動派に反対する広範な統一戦線をうちたてる」と、すぺての反帝民主勢力を結集する反帝国際統一戦線の路線が主張されていたものが、二年後の一九六五年十一月の『人民日報』『紅旗』編集部の論文では、ソ連共産党指導部をアメリカ帝国主義の同盟者と規定して、ソ連共産党指導部を組織的に排除した反米・反ソの国際統一戦線の主張がうちだされた(「ソ連共産党指導部のいわゆる『共同行動』を反ばくする」)。そして、わが党は、「通達」その他にこたえた一連の論文のなかで中国共産党の一部の指導集団が、これらの「路線変更」をおこなうとともに、このあらたに主張しはじめた反米・反ソ統一戦線の路線を不当な大国主義的なやり方で、日本の民主運動、平和運動におしつけようとしてぎたこと、この「路線変更」とむすびついた中国共産党の一部のものの大国主義的干渉こそが、まさに、昨年来、日中友好運動を阻害し、混乱させ、困難をもたらした根拠であることを事実にもとづいて具体的にあぎらかにした。

 いったい、社会党指導部は、中国共産党の側がこの「路線変更」をおこなったことをみとめるのかどうか。さらに、中国側の一部勢カが、昨年来、日中友好運動や日中交流のずべての機会を、反米・反ソ統一戦線へのこの「路線変更」を日本の民主運動におしつけるために利用してぎた事実をみとめるのか、みとめないのか。

 (2) 社会党指導部は、「通達」のなかで、「党はイデオロギー論争には参加しない」とのべ、さらに、文書「理解のために」でも「党は、平和友好運動においては、各回共産党の間でおこなわれているイデオロギ―論争に介入せず」と、その趣旨を再度強調している。しかし、日中友好協会本部襲撃事件をふくめ、昨年来の日中友好運動の「阻害」の責任を、「日本共産党の路線変更」なるものにおわせようとする 「通達」の立場は、まさに中国共産党の一部の指導集団やこれに追従するわが国の対外盲従分子の誤った主張とわが党にたいする不当な非難をそのままうけいれたものであり、公然と「各国共産党間のイデナ口ギ―論争に介入」し、その一方に加担することにほかならない。そのことは、在日華僑の新聞である『東風新聞』や、対外盲従分子の反党雑誌『毛沢東思想研究』『労働周報』などが社会党本部の「通達」を大歓迎で報道し、「日共修正主義集団に対し痛撃をあびせた佐々木委員長を中心とする日本社会党の通達を全面的に支持」(『東風新聞』五月二十九日号)などといっていることからも、明白である。

 社会党指導部は、「通達」の立場が、自分自身の主張にそむいて、国際共産主義運動内部のイデナロギー論争に介入しているというこの厳然たる事実を、みとめるのか、みとめないのか。

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 三 
社会党指導部は、文書「理解のために」のなかで、「昨年春頃から、日中友好、交流運動に、内部から新たな障害が発生した」として「第二回日中青年友好大交流に対する代表派遣拒否」、「北九州市及び名古屋市における中国展に対する妨害」なるものなどを、そのおもな事例としてあげている。しかし、わが党がすでに「赤旗」六月二十五日付論文「かさねて、わが党と自覚的民主勢力への中傷にこたえる」などで、事実をあげてくわしく解明したように、日中友好運動の「内部からの障害」をうんぬんするこれらの文書の断定は、わが党と自覚的民主勢力にたいする、まったく根拠のない中傷にすぎない。

 (1) 文書「理解のために」は、民青が第二回日中青年交流に不参加を表明したことを、日中友好運動への「内部からの障害」の第一の事例としてあげている。 いったい、社会党指導部は、日本の民主団体は中国側から招待をうけた場合、これに応じるかどうかを自主 的に決定する権利をもっていないと考えるのか、どうか。それとも、たとえどんなことがあっても、無条件に招待に応じるべきだと考えているのか、どうか。また、中国側の招待に無条件で応じないことを「反中国」とみなすのか、どうか。 さらに、中国側が、みずからの都合で日本の民主団体などからの招待による訪日をとりげした事例もあるが、民青の場合を非難するのが正当であれば、社会党指導部は、中国側のこのような場合をも非難すべぎではないのか、どうか。

 とくに、第二回日中青年交流は、中国側の招待状に「アメリカ帝国主義とその追随者に反対する」ことが目的の一つとして明記されており、事実上「反米・反ソの統一戦線」の主張を前提として計画されたものであった。

 社会党指導部は、このようた条件のもとでも、日本の民主団体は、中国側の招待を無条件にうけいれるべきであり、不参加を決定することは、日中友好運動の「妨害」行為だと考えているのか、どうか。

 (2) 社会党指導部の文書があげている「中国展にたいする妨害」なるものについていえば、中国展をめぐる混乱の最大の原因が、中国側の大国主義的要求に盲従せず、自主的態度をとった人びとや商社、団体を不当に圧迫し、排除したことにあったことは、かくれもない事実である。とくに、中国展の全国的受人れ団体として一年前から活動してぎた中国展全国協力会および日中貿易促進会にたいしては、きわめて乱暴な攻撃がくわえられ、北九州市での中国展開催の直前の昨年八月二十九日に、中国展覧団張子泉秘書長が、全国協力会の事務局長、事務局次長の解任を一方的に要求してこれを強行させ、さらに、日中貿易促進会は、張秘書長の意向ということで、解散させられるにいたった。これは日中貿易運動の分野におきた干渉行為の一例にすぎない。

 「中国展にたいする妨害」をうんぬんする社会党指導部は、中国側の関係者が、自主、平等、互恵という東西貿易促進運動の基礎をふみにじって、日本側の団体の内部問題に乱暴に介入し、特定の人ぴとの解任や団体の解散さえも要求するという干渉行為を、いったい正当なものとみなしているのか、どうか。

 (3) 日中青年交流の問題にかぎらず、昨年来、日中交流や日中貿易にのぞむ中国側の態度に、毛沢東思想や反米・反ソ統一戦線論のおしつけ、人事問題までふくめた不当な介入など、双方の自主、平等の原則をふみにじった乱暴な大国主義的干渉が顕著になってきたことは、周知の事実である。 (これらの事実は、六月二十五日付論文にも、具体的に指摘されている)

 社会党指導部は、これらの中国側の干渉の事実を事実としてみとめるのか、どうか。

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 四 

社会党本部の「通達」は「今や『日中友好協会』による日中友好の運動の展開は不可能だと判断され、党は全国的に日中友好協会正統本部の組織が整備されつつある現状を見極め、この大衆的友好運動を推進する」とのべて、いわゆる「正統本部」を支持して日中友好運動をすすめるという方向を、はじめて公式に表明した。

 文書「理解のために」は、この点について「いわゆる『日中友好協会』の現状は、口に日中友好をとなえつつ、日中友好を妨害する人びとの団体になってしまっており、真に日中両国の友好、交流を進めているのは日中友好協会正統本部のみである」と断定しで日中友好協会を非難し、「正統本部」を支持する態度を、いっそう明確にうちだしている。

 しかし、「正統本部」とは、日中友好協会を中国にたいする盲従組織にかえることを策動してきた一部の対外盲従分子が、昨年十月、協会から脱走して組織した分裂組織であり、毛沢東思想や中国文化大革命の礼賛、反米・反ソ統一戦線、日本共産党攻撃など、中国共産党の一部の指導集団の政治路線への盲従を「日中友好」の最高の原則としている組織である。したがって、日本社会党が、日中友好協会を否定し、「正統本部」を支持して日中友好運動をすすめるということは、中国側の政治路線への盲従を、社会党自身の日中友好運動の基本方針にすることにほかならない。文書「理解のために」は、「『日中友好協会正統本部』の運動に、党の方針を反映させ、正しい日中友好運動を展開する」といって、この問題を回避しようとしているが、中国側の大国主義的干渉にたいして自主的態度をとるか対外盲従の態度をとるかが、日中友好協会の運動と「正統本部」の運動の最大の対立点となっているときに、前者に反対し、後者を支持する社会党指導部の態度が、日中友好運動における対外盲従路線をえらんだ結果となることは、明白である。

 (1) 文書「理解のために」もみとめているように、一部の対外盲従分子が、日中友好協会から脱走し、 「正統本部」と称する分裂組織をつくる直接の契機となったのは、昨年の国慶節に訪中した黒田寿男と廖承志の「共同声明」の問題であった。この「共同声明」は、いわゆる「妨害の排除」という口実で自主的態度をとる人びとを日中友好運動から排除する方向をうちだしている点でも、中国の文化大革命を無条件に礼賛している点でも、日中友好運動における対外盲従路線の旗印となった。そして、十月二十五日の日中友好協会常任理事会で、宮崎世民、黒田寿男らが「この声明を支持しない人たちとは今後いっしよにやってゆけない」とのべて退場し、翌二十六日の全国理事会には、「共同声明を無条件に支持しないかぎり絶対に出席できない」として出席を拒否した経過にもあきらかなように、脱走派による分裂策動と「正統本部」の組織は、まさに、この「共同声明」を無条件で承認するかどうかか最大の根拠としておこなわれた。文書「理解のために」は、「正統本部」を支持する社会党指導部の立場が、対外盲従の立場とはことなることを主張するために、「共同声明」のうちの「文化大革命」礼賛部分などについて、社会党としては保留していることを強調しているが、もし、社会党が「共同声明」中の「文化大革命」の礼賛について保留するならば、「共同声明」の無条件の承認をただ一つの名分としておこなわれた分裂策動を肯定することは、できないはずである。

 「正統本部」の運動をただ一つの真の日中友好運動として支持する社会党指導部は、「共同声明」の無条件の承認を前提としておこなわれた分裂策動を、党として正式に支持し、承認するつもりなのか、どうか。

 (2) 文書「理解のために」は、「共同声明」をふみ絵とした分裂策動を正当化するために、「共同声明」が常任理事会で圧倒的多数で承認されたなどといい、つづいて「『日中友好協会』は妨害分子を排除し再編成のやむなきにいたり、日中友好協会正統本部の結成をみた」とのべて、「正統本部」が日中友好協会の当然の「再編成」の産物であるかのように事態をえがきだしている。しかし、事実は、まったく反対で、宮崎、黒田らは、当日の常任理事会では過半数をしめていたものの、日中友好協会の大会につぐ中央機関である全国理事会ではつねにとるにたらない少数であり、現に、十月二十六日の第四回全国理事会では、全国四十一都道府県からの百六十三名の出席者が、満場一致でかれらの分裂策動を非難した。そして、自分たちが、日中友好協会の会組織のなかで問題にならない少数派であることを十分承知していたからこそ、宮崎、黒田らは、常任理事会で過半数をしめていたにもかかわらず、日中友好協会の組織のなかで、協会の団結と民主的運営をまもりながら自分たちの主張をのべるという、民主組織の一員として当然の態度をとらず、日中友好協会からの脱走の道をえらんだのである。

 この文書のなかで、全国理事会には一言もふれずに常任理事会の「圧倒的多数」だけをうんぬんする社会党指導部は、いったい「正統本部」なるものが、日中友好協会の当然の「再編成」の産物などではなく、規約と民主的運営の原則も無視して日中友好協会から脱走した少数派が、日中友好協会に対抗してつくりあげた分裂組織であるという事実を正確に認識したうえで、 「正統本部」支持の方針をうちだしているのか、どうか。

 (3) この六月にひらかれた「正統本部」の「全国大会」では、「プロレタリア文化大革命」の宣伝や毛沢東思想の学習を、当面の活動の第一の重点とし、「反米・反ソ統一戦線」、日本共産党を「修正主義」などといって攻撃する立場にたつことを、「正統本部」の基本方針として決定した。

 「中国人民と友好、団結をめざすわれわれは、相互尊重、平等互恵、相互支持の正しい立場に立ってしっかりと毛沢東思想を学び、プロレタリア文化大革命を学び、中国の真実の姿を、日本人民のなかに、ひとりでも多く知らせるために、積極的に奮闘しなければなりません」「プロレタリア文化大革命の指導思想であり、中国七億人民が、そのたましいとしつつある毛沢東思想を学習することが、中国を正しく知る根本であります。 ……さまざまな形の毛沢東思想の学習を日常活動のカナメにしましよう」(運動方針)

 「日本共産党修正主義分子は、……裏切り者ソ連現代修正主義指導部との『統一行動』などをわめきたて、べトナム人民の偉大な闘争を挫折させようとしている」(「ベトナム人民の反米愛国闘争を断固として支持し、共に闘う決議」)

 「偉大なプロレタリア文化大革命の中核となって推進している中国の革命造反派の青年や紅衛兵の小勇将と、日本の独立と平和、真の日中友好のために闘っている青年とが、相互に理解を深め、友誼と団結をかため、アメリカ帝国主義・ソ連現代修正主義・日共修正主義・日本反動派に反対する戦友であることを確認しあうことは、当面の日中友好運動にとってきわめて大きな意義をもっております」(「日米反動派と日共反中国指導部の妨害を打ち破り、第二回日中青年友好大交流の実現をめざす決議」)

 「通達」および文書「理解のために」は、これら極端な対外盲従の方針を「大会」決定として公式にかかげているが「正統本部」を、「真に日中両国の友好、交流を進めている」ただ一つの組織だと断定しているが、社会党指導部は、毛沢東思想や「文化大革命」の礼賛、反米・反ソ統一戦線、日本共産党を両国人民の共通の敵とする、などの立場にたつことを、真に日中友好をすすめる正当な立場だとみなしているのか、どうか。

 もし社会党指導部が、そういう見地にたっているのだとしたら、その見地は、昨年十二月の社会党大会が決定した方針「諸外国との平和友好運動の推進に当っては、自主的、主体的、相互尊重の立場にたった交流、連帯の強化という態度を堅持すべきである。他国の政治方針に従属したり、これを国内の運動にもちこんではならないと同時に、立場の相違を友好運動のさまたげとしてはならない」との基本方針と、どのような関係にたつのか。

 それとも、社会党指導部が「正統本部」のこれらの立場を支持していないとしたら、この対外盲従の路線を「友好」の原則としている「正統本部」を真の日中友好の運動とみなし、反対に、友好運動における自主、平等、相互の内部問題不干渉の原則を堅持している日中友好協会を「日中友好の妨害者の団体」ときめつける根拠はいったいどこにあるのか。

 ここにわが党が提起した一連の質問は、すべて社会党本部の五月十八日付「通達」によるわが党などへの不当非難をめぐる諸問題を正しく究明するためにも、わが国の民主運動の自主性をまもり、日中友好運動の混乱をただしてその正しい発展に道をひらくためにも、公党として、けっしてうやむやに放置することをゆるされないものです。さらにまた、共、社両党が一致点にもとづく共同行動をいっそう発展させて民主勢力にたいして負う責任をはたすためにも、この問題をこのまま見すごすことはできないところであります。したがって、わが党は、日本社会党指導部が、これらの質間にたいする責任ある見解を、誠意をもってあきらかにすることをつよくのぞむものです。

(「赤旗」一九六七年七月十一日)

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